お絵かき講座


簡易講座

ここでは、twitter上などで公開した簡易お絵かき講座を公開しています。説明や見本の絵が雑な部分もありますが、簡易講座ということでご了承ください。

萌え絵の描き方(顔の描き方初級編) 萌えキャラの顔の描き方の手順を示したものです
萌え絵の描き方(頭部と胴体の接合部分) 正面、横、斜め、フカン、アオリの首から上の描き方を示したものです。
目の描き方 立体を意識した目の描き方です。
斜め顔の場合は手前の目より奥の目の方が横幅が短くなっていますが、これは奥行きの圧縮の影響ではなく顔が平面ではなく立体であることに起因しています。
カメラからの距離に対して目の幅や両目の距離の差が小さいため目を描く場合に奥行きの圧縮の影響はほとんど考えなくても良いです。
質感の表現方法 素材の違いによる質感の表現方法の仕方です。主に金属の表現について描いています。
浴衣講座 浴衣の構造を主に解説した浴衣の描き方講座です。
パンツ講座 (R-15)女性用パンツの構造を主に解説したパンツの描き方講座です。
7頭身女性のアタリ 成人女性の身体の比率を記した講座です。
少女のアタリ 5頭身の少女や2.5頭身のSDキャラの身体の比率を記した講座です。

首から下や目以外の顔のパーツの立体的な描き方については機会があれば書こうと思います。(人体構造については勉強中なので講座を書けるレベルではないというのもある)


 

パース講座


主に一点透視図について書いていますが一点透視をちゃんと理解すれば二点透視も三点透視も仕組みは同じであるため難しくありません。(一点透視は「簡単な最も簡単な透視図法」という認識の人も多いけど自分が思っている以上に難しいので三点透視まで勉強した後に再度一点透視の勉強をやり直すくらいでもいいと思う)

 《 パース講座 》
 ◎パースの基礎知識
 ◎一点透視の正しいやりかた
 ◎奥行きの圧縮を考えて描く方法

 三角関数を使わず簡単な四則演算のみで自由な画角で奥行きの圧縮を考えながら描ける方法は私のオリジナルであり、他の教本等で読むことができない当サイトの講座の目玉です。(三角関数を使った講座ならば他所にたくさんあるけど)

下記のものは主にtwitter上で私が公開した図に対する解説を書いたような感じになっています。ちゃんとしたパース講座は少しずつ書き加えていきます。

twitter等で書いた簡易パース講座の寄せ集め
ためになる背景パースの大発見
(外部サイトへのリンク)
漫画家のごとう隼平先生のパース講座です。一点透視図の奥行きを比例計算で求める方法を説明しています。(一点透視の奥行きは慣れてない人が感覚だけで描いてしまった場合に奥行きが不自然になってしまっていることが非常に多いため正しい基準を何らかの形で用意することが重要になってくるけどこれは基準となる長さを1カ所だけ計算で求めればいい)
三点透視図の奥行き計算 上記のごとう先生の講座の「3m離れた30cm角のタイル」を一点透視ではなく三点透視で描く場合はどうなるかを数学的に計算したものです。
ごとう先生の講座は「一点透視」と明示しているのにこの三点透視のような考えの人(本来一点透視であれば床に対して平行な視線にする必要があるけどなぜか視心を床にあるタイルに向けて考えている人)が非常に多いため透視図法に対する正しい理解を持っている人は少ないと実感しました。
足線法との比較 一点透視図や二点透視図が正確に描ける作図法の1つとして足線法というものがあります。これはその描きたい物体を上から見た図を用意してSP(立点)、PP(投影画面)とVP(消失点)を設定すれば良いのです。(足線法の他にもM点法や介線法などがあるから詳しく知りたい人はWebで検索するか建築パースの本で勉強してね)
上記の比例計算による奥行き計算が正しく作図できる足線法と比べてどうなのかを数学的に考えてみました。結果は足線法と変わらないです。つまり、どういう手段で描くかという違いでしかなく足線法などの作図法を肯定している人が「長さを計算して描くのは正しくない」と否定するのは正しくないというわけです。(カンだけで自分が描きたいものが十分描けるので問題ないという人は理論も計算も不要)
望遠レンズと広角レンズ 広角レンズと望遠レンズは対角線消失点の距離で描き分けることが可能ですが、この場合はカメラ位置の違い(カメラから被写体までの距離の違い)が希薄になっている場合が多いため注意が必要です。奥行きの圧縮は距離によって発生するため望遠レンズ風に描いたつもりが奥行きが圧縮できてないのは距離の感覚が足りてないためです。
このタイルが正方形という設定ならば左右両方の対角線消失点(図では片側しか記してない)がキャンバスの両端にあるとき水平画角は90度(縦横比が3:2ならば18mm相当)の超広角になります。標準レンズ(水平画角40度程度)ならば左右の対角線消失点の距離をキャンバスの幅の2.5〜3倍くらいに設定する必要があります。
もしも、このタイルが正方形で水平線が途切れている部分がキャンバスの右端だとすると「望遠レンズ風」と書いた方は実は水平画角90度の超広角レンズで「広角レンズ風」と書いた方は魚眼レンズ以外ではありえないくらいの超広角レンズとなります。(ちなみに魚眼レンズは広角レンズとは原理が異なる。詳しくは魚眼パースを参照)
50mmレンズと28mmレンズ 50mmレンズで描写した「3m離れた30cm角のタイル」を28mmレンズで描写するには同じ距離だとレンズの焦点距離にほぼ比例した大きさ(レンズの収差を考えなければ広角レンズは単に小さく広い範囲が写るレンズでしかなくパースを変化させる魔法のレンズではない)になります。(ただし、実際は三角関数を使わなければならない部分を単純な比例計算で行っておりこの計算方法では焦点距離が短くなるほど比例計算では誤差が大きくなるためこの図の数値そのものはあまり正確ではない)
描写するタイルの横幅を同じにした場合は28mmレンズでは50mmレンズよりも近くに寄る必要があります。広角レンズは望遠レンズよりも小さく写るため同じ大きさで写すためには近寄る必要があるということは恐らく言うまでもないことだと思いますが、絵で描く場合には「距離が違う」というのを理解していない人もいるため注意する必要があります。言い換えれば奥行きは被写体までの距離で決まり、被写体から遠ざかるほど奥行きは圧縮されるわけです。
それが分かればこの問題も簡単に答えが分かるでしょう。
答え→(6)A,B両方正しい。両者ともにアイレベルは約9mで被写体までの距離がBの方が遠くAよりも奥行きが圧縮されているため(文字を反転させて)
奥行きの表現 一点透視は比例計算で簡単に奥行きが求まるため学校の廊下にいるAさんから5m離れたところにいるBさんを見た場合を標準レンズで描写するというのは簡単に表現できます。Xクラスの一番手前が5mで一番奥が15mで距離は3倍あります。したがって、比例計算で奥の方を1/3にすれば教室の幅の10mの奥行きが正しく表現できるというわけです。
これはわざわざ計算しなくても慣れてくれば感覚で問題ありません。正確さが求められる製図ではなく絵なのだからそこまでの正確さは必要なくて計算するのは感覚と実際の描写との大きなずれがないかを確かめるためだけにすぎないからです。(ちなみにこの説明用の絵は定規や直線ツールなどを一切使わずに感覚だけで描いたもの)
一点透視図を自然なパースで描く方法 現在構想中の一点透視講座です。正しくパース線通りに描いていても不自然になる場合がありそうなる理由と自然なパースで描くのはどうしたら良いのかをまとめたものになります。(この表紙絵も不自然なだけでパースが間違っているわけではない)
一点透視というのは簡単そうだけど実は正しく理解していない人が非常に多いのです。というわけで、その理解度を計るためのテストもこちらに用意しました。この答えはその講座内で書く予定ですが、どうしてもすぐに答えを知りたい人は私宛にメールもしくはtwitterのダイレクトメッセージで問い合わせてください。
パースは理論を正しく理解すればデッサン力に関係なく絵を描くことが可能になります。つまり、自然なパースや自然な奥行きで絵を描くことは技術や才能は不要で誰でもできるということです。(逆に言えば理論を理解せず自然なパースで描けるようになるためにはある程度の才能が必要であり、絵を描く練習を積みかさねるだけでは難しい)

パースやお絵かき用語はおちゃめくらぶの用語事典の方にも掲載しているので活用してみてください。(例:一点透視図法奥行きの圧縮




パースの基礎知識


 「パース」というのは「パースペクティブ」の略で遠近感を意味します。絵で遠近感を表現する方法で用いられることが多いのが透視図法による表現です。これは透明なキャンバスに風景を映し出してそれをなぞって描いていたことから付いた名前ですが、この原理を応用したのがカメラです。
 つまり、パースとカメラは密接な関係があるわけです。

 ということで、これからパースを学ぼうという人が知っておくと役に立つ基礎知識をいくつか書いていきます。





 パースというのは、これを見てのように「遠くのものは小さく近くのものは大きく」描くというだけのことが分かると思いますが、(4)を見ると「近く」「遠く」というのは何を基準にしているのかというのが分かりにくいかもしれません。これは数学的に考えるとすごく単純なのですが数学が苦手な人でもパースについて理解できるようにするためにあえて難しい数式等は出しません。
 透視図法には「一点透視図法」「二点透視図法」「三点透視図法」がありますがどれも基本的には同じものであるため一番説明がしやすい一点透視を使ってこれからパースについて詳しく書いていきたいと思います。




一点透視の正しいやりかた


 まずは一点透視の正しいやりかたが分からないと正しい理解をするのは不可能なので図解しておきました。


私がネット上で見る限りは間違えている人が多いのは次の3つです。
  1. 視線の向き
     片眼で見てキャンバスに対して垂直で固定、地面に対して平行。
     これによって真っ正面を向いた物体にパースが付くのは奥行き方向のみとなる。
     同一キャンバス内で対象物によって視線の向きを変えて考えている人が非常に多い。


  2. どの部分が見た目の奥行きを示すか
     キャンバスに対して平行となる部分の長さ。
     これは固定化された視線に対しては垂直となる部分の長さと同じもの。
     そうすることで透視図法は相似によって3次元上の物体を2次元上に理論的には正しく描くことができる。
     上記のように視線の向きを対象物によって変えている人がいるためその結果キャンバスに対して平行で考えてない人が非常に多い。


  3. 対象物までの距離
     透視図法での距離は視線に対して垂直となる平面までの距離になる。(要するに垂線の長さ)
     その結果一点透視図法では上下左右方向には理論上パースは付かない。(上記の図では立方体の前面は視線に対して垂直であるため前面の上の方であっても下の方であっても距離は同じになり距離が同じである以上はパースは付かない)
     「一点透視図法や二点透視図法は鉛直方向(上下方向)の消失点を無視する」という解釈をしている人は非常に多いけどそれは正しくない
     その原因としてそのような「消失点を無視したものが一点透視(二点透視)」という説明をしている教本や講座等が多いのが理由であると思われる。
     正しくは、あくまで上記のように「視線が地面に対して平行で固定となっているため鉛直方向に消失点ができない」というだけである。
     また、視線を固定せず、同一キャンバス内で視線を変えてその視線における対象物までの距離(つまり3次元空間での2点間距離)で考えている人が非常に多い。
     これは画角が広いときは透視図法よりも自然なものとなるけど魚眼パースとなってしまい一般的な透視図法とは全く異なるものになる。


 ちなみに真っ正面を向いてない物体を描くときは二点透視視線を地面と平行ではない角度に固定した時は三点透視になります。したがって、一点透視を正しく理解していれば二点透視だろうと三点透視だろうと理論そのものは全く変わらないため理解するのが非常に容易になります。(一点透視は正しく表現できないけど簡単な図法、三点透視は正しいパースが表現できるけど難しい図法と別々のもののように認識している人が多い)
 一点透視や二点透視は三点透視から消失点を省略した簡易的な図法なのではなく(視線が地面に対して平行などの理由によって)鉛直方向の消失点ができない場合に一点透視や二点透視で描画が可能になるというだけです。
 一点透視で描画する場合はその「地面に平行となる視線(要するに視心)」が消失点となります。

 理論通りにやれば正しいパースになるのかというとそれは別問題(パースには明確な正解がないため例えば一点透視でいえば奥行きがどれだけ長い立方体を描いても描いた人が立方体と思っている限りはそれは正解になってしまう)ですが、「透視図法を正しく理解する」というのが目的ならばこの理論を無視することはできません。ただし、上記のように透視図法というのは簡単に処理(比率で簡単に描画)ができるように一点透視だろうと三点透視だろうと人間の目の見え方とは別物であり、かなり単純化されています。その結果1970年代の今から考えると恐ろしく低い性能のコンピュータの時代から3DCGでも使われています。
 透視図法の陥りやすい間違いは鑑賞方法です。透視図法を使って描いた絵の正しい鑑賞方法は画角と視野角を同じする必要があります。つまり、視線は絵の視心に対して垂直にして片眼で見て視野角と画角を揃えます(水平画角90度で描いた絵ならば絵の横幅の半分の距離から鑑賞すれば正しく見えるので横幅の実寸が20cmの絵ならば10cmの距離から鑑賞する必要がある)。そのため普通の位置(50cm以上)から鑑賞した場合には本来ならばよく見えないはずの人間の視野角を超えたような絵をパース線通りに描いてしまうと正しい鑑賞方法以外で見た場合には逆に不自然になります。(広角で描いて歪んで見えるのは正しい鑑賞方法で見てないため「鑑賞方法が限定されている絵」というだけのこと)
 したがって、広角で描く明確な意図がない限りは鑑賞環境を選ばない標準〜望遠で描くのがベターといえます。これは上記の(4)で書いた違和感の無い画角に相当します。しかし、「標準レンズ」の画角で描くならば普通だと三角関数等の高校数学レベルの知識が必要になり、数学があまり得意でないお絵かき初心者にとっては極めて困難なことです。ところが私が考案した方法では小学生でも簡単に理解できるのです。




奥行きの圧縮を考えて描く方法

 一点透視というのはパースを少しかじった程度の知識しかないと「二点透視や三点透視と比べて簡単なもの」というイメージを持っているかもしれません。しかし、一点透視は思っている以上に難しいのです。

 例えば一点透視で立方体を描く場合に奥行きの長さはどれくらいに設定したら良いのか分かりますか?
 「横の長さに対して2分の1くらい」「3分の1くらい」「いやいや立方体なんだから横も奥行きも同じはず」など様々な意見が出ると思います。実は一点透視の立方体の奥行きはどれだけ長くても短くても間違いではないのです。それならば、どれでも正解かといえばそれも違います。
 自分がイメージした通りの立方体ならばそれが正解とも言えますが、やはり自然な立方体を描けるようになりたいですよね。そのために必要なのが奥行きの圧縮です。奥行きの圧縮をちゃんと理解できていればその立方体のパースに合わせてキャラを描くことも容易にできるようになります。(逆に言えば奥行きの圧縮が理解できてないとパースがちぐはぐの絵になってしまう)

「奥行きの圧縮」というのは端的に言えば「距離感を表現したもの」です。したがって、「距離」さえちゃんと把握していれば特に難しいものはありません。
 ここで言う「距離」がどこの距離を示しているのかというと上記の一点透視の正しいやり方で書いているように固定された視線(キャンバスに対して垂直な向き)に対して垂直な平面までの距離となり、これは一点透視、二点透視、三点透視すべてにおいて共通です。

 奥行きの圧縮に影響を与えるのは距離だけであって画角は関係ない

↓  ↓  ↓

 同じ距離にあるものは広角レンズだろうと望遠レンズだろうと同じように奥行きが圧縮される

※画角によって変わるのは描かれる範囲が変わるだけです。
(写真用のレンズだと画角を変えると被写界深度が変わったり収差による影響があったりするけど絵の場合は画角を変えても範囲が変わるだけ)

 広角レンズは広い範囲が描かれて望遠レンズであれば狭い範囲が描かれる。キャンバスサイズが固定ならば同じ距離にあるものを描いたとき広角レンズは小さく描かれ望遠レンズは大きく描かれる。
 したがって、望遠レンズは奥行きが圧縮されるけど広角レンズだと奥行きは圧縮されないというのは間違いであることが分かる。望遠レンズと広角レンズでメインとなる被写体が同じくらいになるように描いた時には望遠レンズは大きく描写されるため被写体との距離を遠くにする必要があり、その距離が遠くなることで望遠レンズの方が奥行きが圧縮される。これが望遠レンズによる圧縮効果の正体となる。
 逆に広角レンズはメインとなる被写体が同じ大きさになるように描写したときには被写体に近づく必要があるため遠近感が強調される。また広角レンズは描かれる範囲が広くなる分だけメインとなる被写体の距離を変えなくても画面の周囲には近くにあるものが描写されるため相対的に見て遠近感が強調されたように見える。(この場合は相対的に見て遠近感が強調されているだけなので同じ距離にある物体の遠近感が変わっているわけではない)

 パースで知っておくべきことは「パースペクティブ(遠近感)」の言葉通り距離に比例して大きさが小さくなるということです。これさえちゃんと理解しておけば一点透視でも二点透視でも三点透視でも全く変わりません。逆に距離を考えずにパースを理解するのはほぼ不可能と思ってください。(できなくはないけど非常に多くの経験や反復練習が必要になり下手をすれば一生かかっても分からない可能性がある)
 また、物体を見る角度によって見え方が変わるのも知っておく必要があります。床に置かれている正方形のタイルを見る場合には真上から見た場合と斜め方向から見た場合ではタイルと目(カメラ)との距離が変わらなくても斜め方向から見た場合にはタイルの形が細長く見えるようになります。例えばキャラの目を描く場合に斜め顔では奥の目は細くなるのですが、これは奥行きの圧縮の影響ではなく頭部が球面であることが理由です。(変に目だけパースを付けると顔面全体の整合性が取れなくなる)





 水色の線は5m間隔であり、それと左右の2本の平行な直線で囲まれたものは同じ長方形(パースが付いているため見た目は台形)になっています。しかし、その台形の見た目の奥行きは遠くのものほど奥行き方向に狭くなって見えていることが分かります。これがいわゆる奥行きの圧縮と呼ばれているものです。同じ大きさの物体は距離に反比例した大きさで描かれるのが透視図法の大原則ですが、奥行きに関しては距離に比例して小さくなるのではなくさらに縮む(パースの付いた長方形は台形で描かれるけど同じ長方形であっても台形は相似にならず縮んだ台形になる)というのが奥行きの「圧縮」の所以です。
 この奥行きの長さは一見すると単純計算では求めるのが難しそうですが、アイレベルを基準にすれば水色の線は距離に反比例した位置になっています。大きさが距離に反比例するというのはパースの大原則であり奥行きの圧縮というのは特別なものではなくごく当たり前のことというのが分かると思います。(キャンバス上における水色の線の長さが距離に反比例した長さになっているのと同じく水色の線とアイレベルまでの距離を示す緑の矢印の長さも距離に反比例した長さになっている)
 台形の高さはアイレベルからキャンバス下端の長さを基準にした場合には最も手前のもの(5m〜10m)が1-1/2=1/2、2番目のもの(10m〜15m)が1/2-1/3=1/6、3番目のもの(15m〜20m)が1/3-1/4=1/12となっています。このように見た目の奥行きは距離に反比例せずそれよりずっと小さいものとなっているため「奥行きが圧縮されている」と言われているわけです。

 ちなみに一点透視や二点透視は「(基本的に)アイレベルと水平線が一致する」わけですが、これは「視線の向きが地面と平行」であり、「平行線(地球は丸いけどキャンバスに描画される空間内においてはほぼ平面といっても問題はない)を延長するとキャンバス上では収束する(=消失点となる)」ので必然的にそうなります。(一点透視なのに視線の向きを地面と平行に考えてない場合は「アイレベルと水平線が一致する」ということが無くなる)
 では、三点透視の場合はどうかというと三点透視ではカメラの向きが地面と平行ではなくなります。しかし、アイレベルはあくまでカメラの高さを示すものなのでカメラの向きがどうなってもアイレベルは変化しません。とはいうもののカメラの向きが上下に変わることで画面内の水平線の位置が変わります。そのため三点透視では水平線が画面内に存在しないことが大半です。俯瞰(見下ろし)の場合はアイレベルより下に鉛直方向の消失点ができ煽り(見上げ)の場合はアイレベルより上に鉛直方向の消失点ができます。そのため水平線基準ではなくアイレベル基準で考えた方が分かりやすいと思います。
 そのため、本講座においては一点透視や二点透視においてもアイレベルを基準に考えていきます。

 アイレベルを基準にすれば感覚で描くしかないと思われていた「見た目の奥行き」というのは計算によって描くことが可能になります。
 ただし、そのためには被写体までの距離が分からなくてはなりません。これはキャンバス上でどの程度の大きさに描くかを決めれば定まりますが、その場合はその画角も決めておく必要があります。ここでは自然な描写が可能になる標準レンズ(一般的な35mmカメラ換算で焦点距離50mm前後となり、対角画角が45度前後になる)で考えることにします。
 しかし、画角を決めて描くならば三角関数を使って計算する必要がありますが縦横比4:3のキャンバスに描く場合は縦長で使えば(4:3の短辺「3」の方を横にして使用時)最も手前に見える地面までの距離はアイレベルの3倍、横長で使えば(4:3の長辺「4」の方を横にして使用時)最も手前に見える地面までの距離はアイレベルの4倍の距離になります。これは私が三角関数を使って計算したものですが、4と3しか出ないので覚えるのも非常に簡単だと思います。(この「最も手前に見える地面までの距離」は3DCGの「ニアクリップ面までの距離」に相当するものなので3DCGのプログラミングを少しでも行ったことがあれば自分で検算も可能で「ほぼ3倍」「ほぼ4倍」で正しいことが分かると思う)

 これさえ覚えれば標準レンズで描くことは自由自在にできます。
 あともう1つ覚えると便利なのが奥行きを求める便利な式です。それは 見た目の奥行き=奥行き実寸÷奥の面までの距離 という式です。あえて補足するまでもないですが、奥の面までの距離は手前の面までの距離+奥行き実寸で求めることができます。
 例えば地面に置かれた1m四方の立方体をアイレベル1.5m、標準レンズの画角で描くという場合には、横長のキャンバスならば手前の地面までは 1.5m×4=6m 、立方体の奥行き実寸は当然ながら1mなので 1m÷(6m+1m)=1/7(アイレベル基準で1/7が見た目の奥行き)となります。これをより汎用的にしたのが3DCGです。(3DCGの計算式を見た目の奥行きの長さに特化したのがこの式なのですが上記の台形の見た目の奥行きの長さにおいて基準がキャンバス下端までの距離からその描かれている物体までの距離に変わっただけともいえる)
 立方体までの距離を5mとした場合のものはこのように図示されます。(5mの場合は見た目の奥行きはアイレベル基準の1/6になる)



 さて、「見た目の奥行き」というのは立方体のどの部分の長さのことを言っているのかが気になる人もいることでしょう。しかし、「奥行き」は「奥行き」でしかありません。カメラからキャンバスの中心(視心)に向かってまっすぐに伸びた直線の長さを示します。これは上記の横から見た図において水色の線の間が5mですが、アイレベルを示している線の長さも5m間隔で区切られているのが分かると思います。
 ただし、アイレベルはキャンバス上で描くことが可能ですが、「奥行きの長さ」そのものは描くことができず、「見た目の奥行き」となるわけです。この長さをアイレベルとの比率で考えると奥行き方向の辺の長さと消失点からのキャンバス上との距離の比は一致するため「奥行き比率」という言葉を使えば非常に分かりやすく汎用性が高くなります。「辺の長さ」=見た目の奥行きと考えると立方体を構成しているどの辺を考えるかによって見た目の奥行きの長さが変わってしまうのですが、奥行き比率ならば同じ距離にあるものは変わりません。したがって、以下において「見た目の奥行き」というのは「奥行き比率」と考えてください。

 見た目の奥行きは距離で決まるため広角レンズで描こうと望遠レンズで描こうとアイレベルが変わろうとこの立方体までの距離が変化しない限りは(5mの距離における1m角の立方体の見た目の奥行きの長さを示す)1/6という値は不動となります。広角レンズで描く場合にはこの立方体がキャンバスに対して小さくなり、望遠レンズで描く場合にはこの立方体がキャンバスに対して大きくなるだけでしかありません。「広角レンズだから見た目の奥行きを長くする」ということをやってしまいがちですがこれは間違いなので気を付けましょう。
 ちなみに5mという立方体までの距離が変わらずアイレベルが3mに変わった場合にはこのキャンバスの外に立方体が描かれてしまいます(正しくは画面の端に少し上部が描かれるだけ)。したがって、キャンバス内に立方体全体を含めようとすると必然的に広角になってしまいます。アイレベル3mで5mの距離から標準レンズでキャンバス内に立方体全体を描画しようと思ったら三点透視を使えば良いだけです。カメラを下方向に傾けるため鉛直方向にもパースが付きますが、基本的な部分は一点透視と何ら変わりはありません。

 若干広角気味で描画した立方体でさえ奥行きは上記のような感じになるためこれよりも奥行きがある立方体を描画した場合はかなりの広角であるというのが分かると思います。ほとんどの人が無意識のうちにかなりの広角で描画しているのではないかと思います。これは、広角で描画するのが悪いのではなく「意図せずに広角になってしまう=パース感覚が身に付いてない」ことに問題があるわけです。
 これはパース感覚がないから駄目と言っているのではなくこれから身に付けていけば良いだけの話です。

 「描きたいのは人物絵(キャラ絵)であって立方体ではない」という人もいるかもしれません。しかし、最も単純な立方体さえ描けないのに複雑立体であるキャラ絵が描けるわけがないのです。立方体が自分で思い通りのパースで描くことができるようになれば、キャラにパースを付けて描く際にその立方体を基準に描けば良いだけとなります。
 今までは基準も無しにパースを付けて描いていたかもしれませんが、これからは立方体という明確な基準ができるわけです。
 立方体が描ければ任意の直方体(箱)が描けるようになります。人工物というのは直角の有無に関わらず箱を基準に考えると簡単に描くことができます。人体は直方体よりも円柱を基準に描く方が描きやすいのですが、円柱も直方体を基準に描くことができます。つまり、立方体が描けるようになることであらゆるものがパースを考えて描くことが可能になるということです。

 というわけで、まずは立方体を自在に描けるようになってみましょう。

 標準レンズではなく広角レンズや望遠レンズで描く場合には一点透視で描く際には「対角線の消失点」の位置を調整することによって描き分けることが可能になりますが、望遠レンズではキャンバスの遙か外に出てしまうため一点透視では広角レンズで描く人が非常に多くいます。
 他所のパース講座やお絵かき教本のパースの解説で「広角と望遠の描き分ける方法」でよく見かけるものにこのようなものがあります。



 実は、これは描いているのが正方形で一番手前の台形の下底までがキャンバス内に描かれると仮定した場合には(2)の「望遠レンズ」の方でさえ広角レンズ、(1)の「広角レンズ」の方は超広角レンズとなっています。したがって、「広角」「望遠」の描き分けをちゃんと行うためにはキャンバス(どこまでの範囲を描画するのか)を明示する必要があるわけです。さらに単に消失点の位置を変えただけだと奥行きの圧縮を正しく理解するために必要な距離の概念(カメラから被写体までの距離)が薄れてしまい初心者にとっては混乱を招いてしまうためあまりオススメできる方法ではありません。
 何度も書きますが望遠レンズは「狭い範囲を拡大して被写体を大きく写すレンズ」広角レンズは「被写体を小さくすることで広い範囲を写すレンズ」です。広角レンズ、望遠レンズそのものに奥行きを変更するような機能は全く無いのです。望遠レンズで奥行きが圧縮しているように見えるのは望遠レンズは狭い範囲を拡大して写すためメインとなる被写体がフレーム(キャンバスの外枠)に収まらず、被写体から遠ざかることで写したい範囲をコントロールするためです。被写体までの距離が標準レンズや広角レンズで撮影時と比べて遠くになるため結果的に奥行きが圧縮されたような絵になるわけです。あくまで「広角、「望遠」というのは「標準」レンズが基準の相対的なものなので「標準レンズ」の理解無しで「広角」、「望遠」を意識的に使い分けをするのは難しいです。(なぜ距離が遠くなったら奥行きが圧縮されるのかは三角関数を使って計算すれば簡単に求まるけど三角関数を使わず四則演算のみで済むため誰でも理解できるというのが本講座の最大の特長なのであえて三角関数を使った計算方法は省略する)
 このように、本講座ではキャンバスの外枠を基準にした考えとなっているため初心者にとって非常に優しくなっています。もちろん、中上級者であってもこのような考えは限られた範囲内に被写体や背景を描くことになるため構図やレイアウトを考える力を身につけることが可能になります。

 上記のように特に広角レンズで描く意図がない限りは標準〜望遠レンズで描くのが望ましいですが、画角がどれくらいかというのはなかなか分かりづらいため画角を簡単に描き分ける方法も描いておきます。他所の講座ではカンで描くとか、三角関数等の難しい数式を持ち出して説明している場合が多いですが、本講座は本当に誰でも分かるように説明しています。

 上記の4:3のキャンバスを横長に使い標準レンズで描写した時にはアイレベルの4倍になるというのを基準にすれば三角関数を使うことなく四則演算のみで自由に好きな画角で描くことが可能になります。
 このアイレベルの4倍というのは正確には52mmレンズなので距離を半分(つまりアイレベルの2倍)にすれば焦点距離が半分の26mmレンズ相当の広角になり、距離を2倍(つまりアイレベルの8倍)にすれば焦点距離が2倍の104mmレンズ相当のやや望遠で描画することが可能になります。



 このように距離によって決まる奥行きの圧縮比率さえ計算すればパース変形を使うことで二点透視であっても消失点を考えることなく上から見た図を用意すれば描くことが可能になります。部屋の側面や階段などは側面図を用意してそれをパース変形すると簡単に描けます。(アイレベルより上にあるものは上下反転してパース変形する必要がある)



 これは概ね標準レンズの画角で描画しましたが、アイレベルを基準にした奥行き比率をあらかじめ計算しておく(設定しておく)ことで自由な画角で簡単に描くことが可能です。準広角となる35mmレンズ相当ならばアイレベルの4倍を2/3倍にすれば良いです。(アイレベルが1.5mならば1.5m×4×2/3でカメラからの距離は4mに設定すれば良い)

 上記のものは詳しくはパース講座「誰でもできる 奥行きを考えて一点透視で描く方法」と「誰でもできる 広角と望遠を描き分ける方法」に書いているので読んでみてください。すべてのものを計算する必要はなく「奥行き圧縮」の感覚がない人の補助として活用するのがベターだと思います。
 本講座の最大のポイントはパース感覚のない人でも正しい基準が得られるということです。1mがどれくらいか分からない人でも物差しや巻き尺を使えば測れるし1kgがどれくらいか分からない人でも秤を使えば測ることが可能なのと同じことです。あくまで、物差しや秤のような基準となる道具を手に入れただけなので大体10kgが分かれば良い場合に10.000kgを正確に測る必要はないのと同じく正確に計算する意味はほとんどありません。製図をしているわけではないのだからそこまで正確に計算する必要はなく自分の感覚との違いを確かめられるくらいならば問題ないわけです。パース感覚のない人だと正しい値と比べて数倍(数10割)の隔たりがある場合も多いためたとえ計算誤差が1割あっても十分な恩恵が得られます。

 パース講座 「誰でもできる 奥行きを考えて一点透視で描く方法」
 パース講座 「誰でもできる 広角と望遠を描き分ける方法」


 このように一点透視でも二点透視でも「消失点を決めて描く」ということは必ずしも必要でないというのが分かるでしょう。というか、一点透視は原則として消失点がキャンバス中心(これを「視心」という)になり、キャンバス中心にない場合は大きなキャンバスに描いたものをトリミングした状態にすぎないので一点透視の絵において「消失点を最初に考えて描く」というのはあり得ないことなのです。二点透視であっても下記のように「消失点」は決めるものではなく「決まる」ものなので「最初に消失点を考えて描く」ということは良いこととは言えません。(二点透視の2つの消失点を決めた時点で物体の向きや画角が確定してしまうためイメージに合った絵を描くことなんて不可能になる)

 このように「消失点を考えないで描くのは邪道だ」という人のためにちゃんと消失点を取って二点透視で描くための講座も用意しました。この講座の内容を理解すれば物体との角度が変わっても自然な奥行きで二点透視を使って描くことが可能になります。

 パース講座 「二点透視における画角の変化による消失点の取り方の違い」


 これは足線法をベースに解説していますが、三角関数を使わずにこれくらいの物体の角度がこれくらいというのを適当に図示してやれば左右の消失点の位置が割り出せるためそれを基準に描くだけで自然な画角になります。

 ちゃんと消失点を取って2点透視が描けるようになればこんな感じで階段等も簡単に描けるようになります。



 階段を描く場合には斜面の消失点の決め方が重要になるわけですがこの消失点の決め方を書いたお絵かき関係の入門書はほとんどありません。
 この描き方を見てのように消失点というのは「決める」ものではなく「決まる」ものです。つまり、こんな感じの階段を描きたいと思った時点で消失点が決まるわけであって最初に消失点を決めてそれにイメージに合った階段を描こうとしても描けるわけがないのです。しかし、ほとんどのパース講座は「最初に消失点を決めて」みたいな間違った解説をしているため初心者が講座や教本を読んだけどそれを活かすことができない原因になっています。まずは、イメージを最優先し、そのイメージを元に描いていくためにあるのがパースの知識なわけです。パースを正しく理解してある程度描き慣れている中上級者が消失点を基準に描くのは合理的な方法とも言えなくはないけどパースを今から勉強する初心者ならばイメージした絵を描けなくする悪手といえます。消失点を最初に決めるのは頭の中のイメージした段階で「消失点が見える」レベルになってから行うのがオススメです。
 そのための向きと画角で消失点がどのように変わるかを書いたものが上記パース講座「二点透視における画角の変化による消失点の取り方の違い」です。これによって描きたいイメージに合った消失点が自動的に決めることができます。

 頭の中に描きたいものがイメージできても消失点がどのように決まるか分からないという人はまずは階段を真横から見た絵を描いて直方体に沿ってパース変形をさせて貼り付けてやれば超簡単です。これならば本当に誰でも思い通りの画角で思い通りの向きの階段を描くことができます。これは階段に限らずあらゆるものに応用が可能です。

 距離を測って描くには下記のテンプレートにある方眼紙などを使うと便利です。説明は一点透視で行っていますが、視線が地面に対して平行ならばこの方法で簡単に奥行き計算ができるため二点透視にも応用ができます。距離さえちゃんと把握していればいいだけなので何点透視だろうと全く同じ考えで描くことが可能です。三点透視も考え方は同じですが、計算するためには三角関数が必須になってしまいます。三点透視は計算で正確に描くのは難しいですが、製図ではないので正確に描く必要はなく見た目で自然になっていればいいので三点透視は特に難しいものではありません。
 より自然に描くためには被写体によって画角(距離)を変えていく必要があります。「誰でもできる 広角と望遠を描き分ける方法」を読めば自分が描きたい画角で描けるようになるためおかしなパースになることは激減します。

 透視図法を使って描くならば透視図法の問題点も理解しておかなくてはなりません。透視図法は原則として片眼で見たときしか考慮されてないため三点透視だからといって人間の目で見た感じになるというわけではありません。そのため両眼で見た感じにするには補正が必要です。ちなみに両眼で見たら正六角柱の鉛筆の6面ある側面のうち4面が同時に見ることも可能ということで左右の目の視差が重要なポイントとなります。
 これは画角と注視点までの距離が分かれば両眼間隔を元に計算で求めることも可能です。要するに立体視の原理と同じです。それを簡単に描く方法については別の講座で改めて書く予定なので省略します。

 これで奥行きの圧縮を考えて描く方法は完全に理解できたと思いますが、これさえ分かればこちらのサイトのダメ絵(外部リンク)がなぜダメなのかがすぐに分かるでしょう。(これはダメ絵の方は「広角レンズで描写されているからダメ」というわけではなくリンク先でもちゃんと説明があるように「広角レンズとしても正しくないからダメ」だけどその言葉が意味しているものは当サイトの講座を理解していれば分かる)
 リンク先で書かれている「すでに手前の絵から奥行きの圧縮がなされてる絵」というのは上記のようにアイレベル1.5mで標準レンズを用いて一点透視で描画した場合には最も手前の地面までの距離は6mもあり(画角を決めた時点で見える範囲が決まり一点透視において自分の足下付近の地面は見えることはあり得ない)立方体の奥行きを見てのように最も手前にある絵でさえ距離が離れているためかなりの奥行きの圧縮が行われた状態になっているということです。パース感覚がない人だと自分の想像より遙かに遠くにある物体をイメージして描いてちょうど良い感じになるというわけです。奥行きの圧縮が足らないというのはこういうことです。(人物は望遠気味なのに背景だけ妙に広角で描かれているためどうしても違和感のある絵になってしまう)

 カンで描く(感覚で描く)というのはある程度の知識や経験が付いている人が行えば良い結果を得られるのですが、カンで描く(感覚で描く)というのを知識や経験が不足している人が実践すると単なるデタラメになり、それを続けることで悪い感覚が身に付く可能性があり、練習をすればするほど下手になるという悪循環にさえなってしまう場合さえあります。この計算で求める方法は自分の感覚が合っているかどうかの確認に使えるため指導者無しでパースの勉強をしている人にとっては大きな武器になることでしょう。(これがプログラミングだったら実際に作ったプログラムを動作させて正しく動作しているかの確認ができるけど絵は自分で正しく描けているかの確認が非常に難しい)
 パースのついた物体を想像しながら描くというのは実物を見ながら描くデッサンとは異なり、理詰めで描けるようになります。理詰めを行わずに描けるという人は多くの経験を積んで身体で覚えているためですが、それをすべての人ができるわけではありません。普通に描くだけでは下手をすると一生かかっても身に付かないのがパースです。
 また、パースについての正しい理解を図るならば机上の計算や感覚だけに頼るのではなく実際にたくさんの風景を(ちゃんとパースについて考えながら)見たり、カメラを使って(レンズの焦点距離や被写体までの距離を意識して)写真に撮ったりしましょう。「見ること」と「考えること」の両方が重要です。そうすることで、自分が描きたいイメージが実際に浮かぶようになるとともに「どういうものが自然なのか」ということも分かるようになると思います。

 何度も書きますがパースというのは絶対的なものではなくあくまで道具の1つにすぎません。製図をするのではなく絵を描くならば被写体までの距離、被写体までの大きさ、アイレベルが何よりも重要です。あとは多少アバウトになっても全体的なイメージを損ねずに不自然にならなければ問題ありません。あくまで今回の講座は「不自然にならないためにはどうするのか?」をパース感覚がない初心者にも分かるように解説しただけのものなので「すべてのものを計算によって描く」というのを推奨しているわけでもありません。
 パースについてちゃんと勉強するならば最低でも高校以上の数学の知識が必要になってきますが、本講座を見ての通り絵を描くだけならば難しい計算や数学は不要なので楽しみながら絵を描いて自然にパースを身につけていきましょう!

◎他所のパース講座等で少しパースの知識を得ている人への補足

 一点透視で奥行きを考えて描く方法となると真っ先に思い浮かぶのが「正方形の対角消失点を使う方法」でしょう。この方法は私も「パース講座や入門書等でよく見かける間違い」「誰でもできる 広角と望遠を描き分ける方法」で採り上げていますが、この方法は二点透視について勉強した後に改めて一点透視を勉強するという人に向いている方法です。

 ただでさえ「消失点」というのは肉眼では見えない(ある程度慣れると平行な組みの直線の延長線の空間上に消失点が見えてくるけどパースの勉強を始めたばかりの初心者にそこまで求めるのは難しい)わけだし、「対角消失点」は机上の理論でしかありません
 床に置かれた正方形タイルを見て対角消失点を目の前に浮かぶという人は相当レアな人でしょう。そのため、この方法は「(初心者が)イメージ通りのパースで描く」という目標から遠い段階からスタートするため初心者には優しくない方法といえるわけです。

 そして、問題なのは対角線消失点を元にした場合は「基準が画角90度」となってしまうということです。tan θの値θは画角)から逆算して求めれば適切な画角で描くことは可能ですが、パース感覚が無くどの程度が適切かが分からない初心者だと無駄にハードルを高めることになります。
 これは、三角関数はブラックボックスとして扱い「(標準レンズで描くならば)2つの対角消失点の間隔をキャンバスサイズの3倍くらいに設定してください」と言えば良いだけの話ですが、初心者だと「キャンバス外の適切な位置に消失点を取る方法」から教える必要があります。これはデジタル絵だとツールによって操作方法が大きく変わります。アナログ絵だと紙を付け足すだけで良いのですが、描きたい絵の3倍の用紙を用意してくださいと言われたら面倒なのでキャンバス内に対角消失点を取ってしまいがちになります。どれくらいが自然な奥行きかが分からないから必然的に楽な方に流れるためそうなってしまうわけです。自分のイメージ通りの絵が自然なパースで描けるということが目的であるならばその目的をあえて苦労して行う必要がなく楽にできるものがあれば楽な選択肢を選ばせてあげることは良いことであると私は思います。
 例えば500m離れたコンビニまで「アイスを買いに行きたい」という人に対して自転車を使わず「歩いた方が健康によい」と歩きを薦めるのは1つの方法論としては否定することはできませんが、歩いてコンビニまで行く場合に国道の横断歩道のない場所を通ればショートカット(対角消失点をキャンバス内、もしくはそれに近い位置に取る)が可能と知れば危険を感じない人(パース感覚がない人)だとそれが普通になってしまうという問題もあります。健康増進(パースの深い理解)が目的ではなく「アイスを買う」(イメージ通りの絵を描く)というのが目的であるならば自転車(本講座)を薦めることは目的をよりお手軽に達成できる方法として推奨できる方法であると同時に危険(パース感覚を狂わせる)なショートカットを避ける予防策にも有効となります。まぁ自転車はこけたら危ない(本講座で四則演算がうまくできない人だと正しく求められない)というのはありますが、ここでは安全な運転ができる(普通に四則演算ができる)人を対象にしているので問題はありません。(歩きの場合は危険なショートカットを前提にしているのは、初心者が描いている絵や多くのパース講座でそのような例を挙げているものが多いのを見ればやむを得ない)

 対角消失点を取る方法と比べて本講座は目に見えるアイレベル(≒水平線)が基準であり、キャンバス内のみで完結するという点が初心者にとって非常に優しくなっています。しかも、計算は簡単な四則演算のみで済みます。また、消失点を基準にする場合も一点透視ではほぼ自然な画角にすれば確実にキャンバス外の遠い場所に出てしまう対角消失点とは異なり、消失点はキャンバス内にあるためそれを基準にする方が初心者にとって優しいものとなります。
 しかも、この考え方は画角を変えた場合においても何ら変わりありません。画角θと対角消失点の間隔はθの値が極めて小さい場合はほぼ反比例しますが常識的な値を設定した場合にはそういうことにはならないので普段とは異なる画角で描きたいという場合には三角関数表を見ながら描くということが必要(パース感覚がない場合は「適当」というのが難しいため三角関数表という「基準」が必要)になってきます。本講座では画角を変えた場合でも簡単な四則演算のみで済み覚えることも「奥行きの公式」と「手前の地面までの距離はアイレベルの4倍」だけで済みます。
 さらに現実世界において「画角○○度」を実現するにはカメラのレンズの焦点距離を画角に換算するという手間が必要ですが、本講座は焦点距離からダイレクトに計算できるため「カメラの○○mmレンズ相当の画角で描きたい」というのがいとも簡単にできてしまいます。
 したがって、本講座は他のどの講座やお絵かき教本と比べても初心者にとって優しいものとなっているわけです。

 本講座によって奥行きの感覚がない初心者でも自分で確認して描けるようになり、奥行きの感覚がある程度身に付いてからさらにパースについて深く学びたいと思ったらちゃんとパースについて学べば良いだけです。「こんな初心者向けの簡易方法を覚えるくらいならばちゃんとした方法を勉強すべきという人もいるかもしれないですが、それは「萌え絵を描きたかったらちゃんとまず最初に体の骨格構造や筋肉について、デッサンについてしっかりと勉強すべきだ!」というのと同じです。萌え絵を描きたい人が必ずしもそこまで深く絵について勉強したいかというとそうではなく大半の人が簡単にバランスよく描けるための技法を知りたいと思うことでしょうしそれを求めることやそういった考えを教えることは何ら問題はないです。そうやって、まずは「描くことが楽しいことである」ということをしっかりと身につけるべきだと私は思います。(少しパースに興味がある初心者に難しいパースの専門書を薦めるのは自作PCに興味がある初心者に「OSの作り方」を記した本を薦めるくらい飛躍していることを理解するべき)
 「本格的な絵の道に進みたい人」ではなく「ちょっと興味があるからやってみよう」という初心者にとって重要なのは自分が描きたいものをより簡単に実現できる方法です。萌え絵が描きたいのにデッサンの勉強ばかりして絵を描くのが嫌になったら本末転倒ですね。そうならないための「初心者向けの萌え絵のバランス講座」のパース版みたいなのが本講座というわけです。この講座でパース感覚(バランス感覚)を身につけてからさらに深く興味を持ったらより専門的な知識を手に入れるために専門書に手を出すのは良いことですよ!(小学の算数レベルですべて理解可能で「世界一簡単なパース講座」を自負する本講座が理解できないレベルだと専門書を買っても宝の持ち腐れになるだけだと思う)


 「本講座は初心者向けではない」「初心者はパース専門書でちゃんと勉強すべき」という意見をネット上で見かけたのでこの補足を書いてみましたが、この補足を読んでまだこの講座が「初心者向きではない」と考える方がいるのでしたらぜひ私が問題として掲げている点を改善した初心者向けの講座を書いてみてください。否定をするならば対案を用意するか論理的に問題点を挙げないと「否定意見は意見ではない」と思います。否定する人は自分の考えと違うため頭ごなしに否定している場合が非常に多いので注意しましょう。
 この講座のサンプル絵も「わずかに作画のずれがある」というだけで「このパース講座の理論は間違っている」という解釈をしている人が実際にいるくらいです。作画のずれといっても実際の描画の際には全く気にしなくても良い範疇だし解説している理論は正しいものである(これは中学の数学レベルで証明可能であるため興味がある人は自分でやってみて!)ため本文をちゃんと読んで理解していればそのようなアホみたいな結論に達することはあり得ずまさに「否定意見は意見ではない」そのものです。



テンプレート

PCで絵を描いたりマンガを描いたりする場合に便利なテンプレートを置いています。フリー素材なので自由に加工して使ってOKです。(良かったら掲示板twitterでコメントをくれるとうれしい)

4コママンガ用テンプレ 4コママンガを描くときに使える枠です。画像サイズは1000x3000なので好きなサイズにリサイズして使ってください。
方眼紙 方眼紙です。SAIで背景を描くときなど大体のサイズを測って描きたいときにこれがあると非常に便利です。自由にリサイズ、加工して使ってください。800x600の透過型PNG形式。


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